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2010年09月29日

ライバルは、20代の頃の自分。

すっかり熟睡していた乙は、寝室から御手洗いに起き
てきた。

夜中の3時前だった。

書斎からバシバシとキーボードをたたく音が聞こえた。

甲はパソコンにむかってガンガン仕事をしていた。

甲の上半身は裸のままで太い腕と分厚い胸板は、
まるで肉体労働者のようだった。

天才画家のゴッホは、とてつもない剛腕だったという
逸話が頭を過った。

乙は目が冴えてしまった。

そして、同時に目の前の甲という男に恐怖を感じた。

「あなたって、いったい何と闘っているの?」

乙は襟を正しながら、寝起きホヤホヤの声で聞いた。

甲はパソコンに向かったまま、こう呟いたように思
えた。

「20代」

目の前のこの男は、40代になったら30代の頃の
自分を、50代になったら40代の自分をライバルと
して永遠にがんばり続けるのだと思った。

乙は、

「好きなことは継続できることなのだ」

ということの意味が、ようやくわかった。

誰に強制されるわけでもない。

誰に合格点を決められるわけでもない。

すべて自分で決めていいのだ。

その代わり、圧倒的実力が求められるのみ。

いたって、シンプルである。

乙は、何かとてつもない怪物を相手にしてしまった
ように感じた。

こんな感覚は、初めてだった。

また、熟睡できた。

乙の寝顔は、ちょっと誇らしげだった。


...次代創造館、千田琢哉

★2010年9月刊『伸びる30代は、20代の頃より叱られる』
★2010年7月刊『転職1年目の仕事術』
★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

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2010年09月22日

「今から」

幸せになるオンナは、

「今から」

を逃さない。

甲のもとには、毎日無数の

「今度・・・」

メールが届く。

「今度」という文字が含まれているメールは、
即削除、ゴミ箱逝きだ。

甲の人生の辞書に「今度」という文字はない。

幸せになる人生において、「今度」は禁句なのだ。

人生で一番若い日は、「今」である。

人生で一番年老いた日は、「今度」である。

つまり、「今度」は一生実現されることはない。

「今度」という言葉を使うくらいなら、人を誘っては
いけない。

さげまんの口癖は「今度」だ。

「今度」を使う度に夢は遠のいていく。

そしてオバサンになる。

乙が幸せになったのは、「今から」が口癖だった
からに他ならない。

24時までなら、「今から」は失礼ではない。

もし24時前なのに「今から」が失礼にあたると
いうことは、たいして好きじゃないということだ。

すべて乙に、教わった。

乙は今女性起業家として先に成功している。

ベストセラーも出している。

甲とはあるパーティーで出逢った。

乙は、20代の頃より綺麗になっていた。

甲は壇上で40名の著者が司会者に紹介されて
乙の名前が呼ばれたとき、誰よりも大きな拍手
を贈った。

乙も甲の順番には大きな拍手を返した。

終了30分前に、二人は行方不明になった。

「今から・・・」

二人は同時に口を開いた。


...次代創造館、千田琢哉

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★2010年7月刊『転職1年目の仕事術』
★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
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★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
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★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

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2010年09月15日

輪廻転生

乙は、史上最強のあげまんだった。

「またお会いしたいですね」

ではなく、

「今からお会いしましょう」

と言って、身近なことから確実に夢を実現
させていった。

「どっちもいいね」

ではなく、

「こっちが好き」

と言って、好きでも嫌いでもない人より、
大好きな人と限られた人生の時間をたっ
ぷり過ごしたいと考えていた。

陰口軍団から距離を置いているうちに、
一人でバリバリ仕事をして、ついでに
資格試験も取得してしまったために、
転職してキャリアアップできた。

キャリアアップしたら、そこには素敵な
女性と素敵な男性が溢れていた。

乙と甲は、その職場で出逢った。

甲は、社内のスーパースターだった。

出逢って目が合った瞬間から、二人は
すでに付き合っていた。

甲の仕事はますます上手く行った。

口にしたことすべてが形になって、周囲
を驚愕させた。

絶頂期に甲は会社を辞めた。

乙の前から、突然姿を消した。

10年後、イタリアから甲の書斎に「真実の口」
の絵ハガキが届いた。

乙からだった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あなたと最初のデートで観た映画
『天国から来たチャンピオン』
憶えてる?

人が生まれ変わる時って、神様はほん
の少しだけ前世の記憶を残しておいて
くれるんだよね。

今度あなたが生まれ変わって、
もし世界のどこかで私を見かけても、
どうか私に声をかけないでください。


追伸.
今度は、私からあなたに声をかけるから。


...次代創造館、千田琢哉

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★2010年7月刊『転職1年目の仕事術』
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2010年09月08日

遅刻の治療法

乙は生来の遅刻魔だった。

甲は待ち合わせにいつも一流ホテルのラウンジ
を指定するようになったのは乙のおかげだった。

どれだけ待たせられても心置きなく本を読むこと
ができるからだった。

乙はファッション雑誌のモデルをしていたくらい
の美人だったのに、いつも遅刻が原因で呆れか
えられてフラれ続けの人生だった。

モデルをクビになったのも度重なる遅刻が原因
だった。

乙はどんなに遅刻しても甲に捨てられないのが
怖かった。

人生初めての経験だったからだ。

でも、本当は甲に怒って欲しかった。

そうでもしないと、甲はある日突然乙の前から
姿を消しそうだったからだ。

「この人は将来とてつもない大物になる」

乙にはそれがよくわかっていた。

「この人とは別れたくない」

とも思っていた。

乙が待ち合わせのラウンジにいつも通り小走り
にやってきた。

いつも通り甲が読書に熱中している大きな背中
が見えた。

「待った?」

と乙はわざと怒られるように軽く言った。

甲は読んでいた本をパタリと閉じて平然と言った。

「オレもちょうど今来たところだよ」

乙は自分の不甲斐なさに涙が溢れた。

テーブルの上には、氷の溶けきった薄茶色
のアイスコーヒーの表面のすっかり乾いた
グラスが置いてあった。

誰の目から見ても1時間以上待っていたの
は明らかだった。

最後までグラスを下げなかったのは、ホテル
側の粋なサービスだったのだ。

それ以来、乙は二度と遅刻しなくなった。


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2010年09月01日

時間を増やす魔法

日付が変わった刹那、乙は展望ラウンジ
からライトが消えた瞬間の東京タワーに
目をやって言った。

「よくそんなに膨大な仕事を淡々とこな
せるわね」

アルコールのダメな甲はジンジャエール
を片手に持っていた。

「時間を倍増させる魔法があるからな」

乙は言った。

「へぇ~、ジンジャエールで酔えるんだ」

乙は実家が伝統ある老舗酒屋で生粋の
大酒飲みだが甲の前では弱いふりをして
いた。

乙の片手にはチェリーがのっけられたノン
アルコールカクテルが持たれていた。

甲はいたって真面目だった。

そして、いつもどおりに即答した。

「過去を振り返らなければいいだけ」

しばらく沈黙が続いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「過去を振り返らないと、どうして・・・」

乙が沈黙に耐え切れずに口を開けた。

これも、いつものことだった。

「同窓会には出席しない」

「なるほど!」

「同郷会にも出席しない」

「なるほど!」

「2次会にも出席しない」

「なるほど!」

テンポよく会話が弾んだ。

「確かにそれなら時間が倍増するかも!」

乙は妙に納得した。

「だから存分に仕事をしている上に美人と
いられる時間をつくることもできる」

「えっ」

カウンターに並んで座っていた乙の目だけ
が振り返った。

バーテンダーが目を逸らした。

0時30分になって再び東京タワーがライト
アップされた


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2010年08月25日

花火の日

忘れていた。

今日は外苑前の花火大会だった。

あちこちから甲のマンションには人が集まって
きて賑わっていた。

それで気づいたのではない。

いつもはビシッとスーツを着こなした美人コンシ
ェルジュが目を見張るような美しい浴衣姿にな
っていたからだ。

甲のマンションは、まるでその花火大会を観る
ためにあるようなペストポジションの高層マンシ
ョンだった。

熱帯夜の中、キリリと冷えたビールを片手に、
エアコンで寒いくらいの部屋でソファーに深々
と腰掛けて楽しめる。

正確に言うと、部屋のエアコンがガンガンかかっ
ているから、熱いお茶かコーヒーを飲みながら
のぜいたくな花火観賞だった。

いつもは2人のコンシェルジュが今日は10人
体制で案内をしていた。

一発目の花火が上がった。

「うわ~っ」

歓声がわき上がる。

マンション周辺や道路は普段見たこともない
人だかりで溢れかえっている。

甲は部屋で一人だった。

こんなに日でもパソコンに向かって仕事をして
いたのだ。

仕事を食事に例えたならば、花火は漬物や、
ふりかけのような存在だった。

おかげさまで、すこぶる仕事がはかどった。

やっぱり美しいものが人類をここまで進化
させてきたのはどうやら間違いではなさそ
うだ。

「8月19日って確か外苑前花火よね」

乙からメールをもらっていてまだ返事をしてな
かったのがふと頭をよぎった。

慌てて写メールで撮ったものを送った。

ラッキーなことにそれがクライマックスだった。

無欲の勝利だ、などと意味不明な言葉を呟
きながら得意気になって送信した。

そういえば乙と出逢ったときも花火の日だった。

あれが、乙との始まりだった。

始まりは、いつも終わってからわかる。


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2010年08月18日

尊敬しながら、笑った。

「デキル男ってどうして男同士で群がらない
のかしら」

モスコミュールを片手に乙は呟いた。

「どうせ嫉妬されるからつまらないからだろ」

甲は面倒臭そうに答えた。

いつも面倒臭そうだけど、面倒見はいいのだ。

乙は妙に納得した。

いい加減に答えた甲の回答はいつも的を射て
いるから乙は好きだった。

甲にならどんなにキツイことを言われても不思
議と腹が立つことがなかった。

確かに男同士だと最初に自己紹介をしながら、
必ず相手を上か下かを判断しようとしている。

これは女性同士の熾烈な戦いと同じだ。

結局、男も女もモテる人間は群がらない。

かといって、寂しそうでもない。

そこが複雑で難しいところだ。

「でもいつも独りでいるのに寂しそうな人と
そうじゃない人の違いって何かしら?」

アルコールが程良く回った乙はちょっと妬けて
聞いてみた。

「親友がいるかどうかだろ」

また、甲は即答だった。

悔しいけど、これ以上のご名答はなかった。

でも今度の乙は少し不満だった。

2杯目を注文してから、

「親友だけか・・・」

と囁いて見せた。

「同性でも異性でも肉体関係があるか否か
だけで同じ親友だろ」

これまたすごい論理だった。

「オレはレズは好きだけどホモは嫌いだ」

甲は吐くように言った。

乙は尊敬しながら、笑った。

隣のカップルの美人も一緒に笑った。

隣に座っている男が少し可哀想だった。


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2010年08月11日

壁の花

乙と出逢ったのはVIPたちが集うパーティー会場
だった。

正確にいうとパーティー会場の外だ。

成功したお金持ちが集うそのパーティーには、
それに群がる人だかりができていた。

甲は「つまらないな」と思ってトイレに行くふりを
して帰るところだった。

そしたら会場でひときわ目立った乙と目が合った。

乙も同じことを考えていたのだった。

似た者同士は、目を見たらわかる。

「成功者にはパーティーが苦手な人が多い」

「ヤクザの親分には下戸が多い」

という言葉を支えに生きてきた甲は、パーティー
が苦手なのもお酒が飲めないのも自分勝手に
正統化していた。

でも、こんなにモテそうな乙がパーティー嫌いだ
と知って甲は嬉しく思い、そして少し驚いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あのときのパーティー会場でのあなた、壁
の花のように気まずそうでお気の毒だったわ。
きっと、人に媚びるのが嫌いでサラリーマン
が務まらない典型的なタイプだと思ったの」

乙はパーティー会場にいるときから甲を観ていた。

「なんだ、見てたのかよ」

甲はぶっきらぼうに言った。

「だってパーティー会場には1人でいる人が
将来の成功者なんだもの」

乙は、実はパーティーの達人だった。

群がられている人間は、過去の人。

群がっている人間は、永遠の傍観者。

それが乙の持論だった。

後に甲も乙も世に羽ばたいて行くことになった。

将来の成功者は、パーティー会場の壁の花から
しか生まれないという乙の目利きはどうやら本当
のようだった。


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2010年08月04日

与え好き。

乙は六本木ヒルズに入っているスターバックス
でストローでマンゴーフラぺチーノを口に含みながら、

「ねぇ、あなたってどうしてそんなに与え好きなの?」

と甲に聞いた。

甲はプレゼント魔だった。

甲と付き合った女性はいつも自分以外の女性には、
プレゼントして欲しくないと不満に思った。

甲のプレゼント好きは打算ではなかった。

それがわかるからこそ、女性は心配になるのだ。

世の中の美人の本音は、尊敬している心底惚れ
た男性には、自分以外に対しては冷たくいて欲し
いのである。

甲の祖母の哲学で、何かを新しく買ったら、
何かを捨てることによって豊かになるという
のがあった。

だから、甲はどんどん人にプレゼントした。

甲の部屋に遊びに来たら、必ず面白いものが置いて
あった。

だから、遊びに来た人はそれに夢中になる。

夢中になっている最中に、

「よかったら、それあげるよ」

とプレゼントしてあげると、それだけで相手は甲のこと
が大好きになるのだ。

よくプレゼントに何をあげたらいいのか困る、という人
がいる。

甲にはこれが信じられない。

女性がデート中にブティックに入ることがある。

気に入ったものは必ず他の商品もひと通り見終わった
上で、最後にもう一度念入りに手に触れてチェックする。

そして、値札を見る。

「お待たせ。ありがとう、行こっか」

と言ったら、それが今、欲しいものだ。

財布の予算と相談して、今変えるものであれば、御手
洗いに行かせている間にそれを買ってしまって、その
日の晩にプレゼントすることだ。

高価なものであれば、その商品をきちんと憶えておいて、
それを誕生日プレゼントにすればいいのだ。

これが記憶力である。

おっと、ついついビジネスライクのマーケティング的な話
になってきてしまった。

要は愛している、ということは記憶力にモロに出る。

だから女性は誕生日や記念日を忘れることを許さない
のだ。

「仕事でも人に与えてばっかりいるの?」

乙は遠回しに質問した。

「そうだね。よく上司に部下に与えすぎたら後から
困るぞっ、て忠告されてるよ」

甲は無邪気に即答した。

「は~、なるほど。それが成功の秘訣なのね」

とため息を吐きながら言った。

甲は会社で周囲の3分の1の稼働率で周囲の3倍
の生産性を挙げていた。

あり余った時間は、人に与えることばかり考えていた。

まさに小学校低学年のドッヂボールの試合に、運動部
の大学生が参加している状態だった。

「お待たせしました」

店員が笑顔で注文していたアツアツのチョコレートチャ
ンクスコーンを持ってきた。

甲はレジで乙が2秒間視線を横にやっていたのを見逃
さなかった。


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2010年07月28日

手紙書くよ。

乙と出逢ったのは独りぼっちの卒業旅行中だった。

甲は青春18切符を買い繋いでの47都道府県一周
旅行だった。

計23日間で北海道から沖縄まですべてを回った。

乙とは大分県の某駅で一緒になった。

トラブルがあって2時間停車した暗くて寂しい駅だった。

でも、これが運命だった。

千葉県出身で大学では交通社会学を専攻していた
乙は本州の最北端と最南端を目指しての1人卒業
旅行だった。

乙の片手には加藤諦三の『高校生日記』が握られて
いた。

『高校生日記』といえば、初版1965年でとっくに絶
版になっている本だから、相当な加藤マニアだった。

それを知っている甲も人のことをとやかく言えない。

大分県から宮崎を経て、鹿児島県まで南下すると
いうことで2人は意気投合した。

鈍行列車だったが、宮崎県内では各駅の停車時間
がとても長く、まるで2人きりの貸し切り列車のよう
だった。

たまに背中に大きなかごを抱えたままおばあさんが
乗車してくる。

でも、それがまた田舎の匂いがして味わい深かった。

甲と乙は出逢って間もないのに、話が弾んだ。

きっとお互いに1人旅だったから、話し相手が欲しか
ったに違いない。

知らぬ間に乙は甲の手を握っていた。

宮崎駅のミスドで一緒に夕食を取った後、商店街の
ゲームセンターで遊んだ後、プリクラを撮った。

駅界隈から旅行慣れた乙が予約していた宿泊先まで、
長い距離をずっと2人で歩いた。


・・・・・・・・・・・・


まさか、乙は出逢って24時間後に別れが来るとは、
思わなかった。

乙は一緒に最南端まで行こうと泣いて懇願した。

周囲に乗車していた女子高生たちが夢中になって
注目していた。

甲はひと言、

「手紙書くよ」

とだけ言って甲は乙の小さな白い頬をグローブのような
大きな手でぬぐって西鹿児島駅でそのままで降りた。

女子高生の1人が、

「えっ」

と思わず叫んだのが聞こえた。

乙はそのまま西大山駅に向かった。

甲は乙が見えなくなるまでホームで見送った。

甲は真っ赤に染まった、JR西鹿児島駅の長い長い、
階段をゆっくりと噛み締めるように降りた。


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2010年07月21日

「お休みなさい」が言えなくて。

夜の11時前だというのに東京は本当にみんな元気だ。

まるで昼間のような明るさと活気で街が動いている。

場所は表参道の交差点だった。

甲は、1人だった。

信号待ちでふと南側を見て驚いた。

六本木ヒルズが猛烈に綺麗に浮き彫りになっている。

ちょうど青山通りは山の尾根のようになっているため、
絶景なのだ。

「このスカイスクライバーの中にはすごいエネルギ
ーが詰まっているのだろうな・・・」

甲は想像して鼓動が高鳴った。

3回ほど信号を見送っただろうか・・・

斜め後ろのハナエ・モリビル側から声がした。

「こんばんは」

(おいおい、こんな時間にアンケートか?)

続けて、

「あの・・・ご近所様の甲さん・・・でしたよね」

(宗教の勧誘か?ん?何で名前知ってんだ・・・)

「エレベーターの中ではいつもありがとうございます」

マンションで同じフロアの乙だった。

エレベーターを降りたら甲は右側に、乙は左側に曲がる。

初対面の乙からは、

「お休みなさい」

と声をかけられたのが最初の出逢いだった。

若いのに身なりがしっかりして礼儀正しい子だな、と思っ
ていた。

きっと、育ちがいいのだろうと。

マンション内でみる乙と外で見る乙とではまるで違った。

普段何気なく当たり前に思っている住人でも、街に出る
とこんなに映えるのか・・・

甲は乙のカッコよさに驚いた。

「今仕事終わって取引先と別れたところなんですが、
よろしければ一緒に帰りませんか?」

甲はこの後、ピーコックで買い物と青山リブロで本を買う
予定が詰まっていた。

自分のペースを乱されるのはごめんだ。

「いや、歩いて帰るから・・・」

甲はきっぱり断ってみた。

「私も歩きます。ピーコックでパスタを買って、リブロで
買いたい本があるんですけど・・・」

厭味なく人懐っこい乙はすごいな、と思えた。

表参道から青山一丁目まで地下鉄で2駅分で大人の
足で約30分程度のウォーキングになる。

乙は見かけによらず、買い物がテキパキとして素早い
のに驚かされた。

閉店間際のピーコックの値引きされた狙いのパスタを
素早く手に取ると、カマンベールとサラダを掴んでさっと
レジに並んだ。

ビブロでは、ファッションの月刊誌と電子書籍関連の本
を掴むとこれまた素早くレジに持っていった。

帰り道、乙は赤坂にある金融機関に強みを持つ外資系
コンサルティング会社の入社2年目の社員であることを
知った。

入社2年目で月給が100万超えているという。

家賃を考えたらそれもそのはずだった。

「甲さんて、いつも昼間から何やってるんですか?あ、
待ってください。仕事当ててみます」

外苑前の伊藤忠商事東京本社ビル前から青山一丁目の
ツインビル前まで20を超える職業を並べられたが、ついに
当てられなかった。

(それもそのはず、自分でも職業を知らないのだから・・・)

「そんな仮説構築力と類推力ではコンサルタントと
してもたいしたことないな?」

甲はちょっとからかってみた。

乙はまったく笑わないで、エレベーターを降りる際に下唇
を軽く噛みながら、

「お休みなさい」

が言えなくて、

「そうなんです。私、転職しようと思ってるんです」

とちょっと寂しそうに告白した。

今にも泣き崩れそうだったかもしれない。

甲はあえて気づかないように淡白に言った。

「それじゃあ、ちょうど今日発売の僕の本をあげるよ」

乙が少し微笑んだその時の表情は、2008年5月に亡く
なった川田亜子アナに瓜二つだった。

乙もまた、いつも一人ぼっちだった。

一人ぼっちの女性に美人が多いのは、なぜだろう。


...次代創造館、千田琢哉

★2010年7月刊『転職1年目の仕事術』
★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

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2010年07月14日

エレベーター

乙との出逢いは、エレベーターだった。

エレベーターの30秒は人生の縮図だ。

地上36階のインテリジェントビルであるセミナー
に参加した後、甲は帰り支度をするのに少し時間
がかかった。

講師に質問をしていたのだ。

40人はいたであろう部屋には結局甲と乙の2人
きりになってしまった。

甲はそのままエレベーターに向かって下りボタン
を押して待った。

遠くからハイヒールの音が近づいてきた。

リズムからコンパスの長さがよくわかった。

エレベーターが空いた。

甲は「開」ボタンを押して待っていた。

乙は、

「あっ、ありがとうございます」

と言ってエレベーターに駆け込んできた。

「いえ・・・」

と答えた甲は、乙の顔を見て驚いた。

セミナー中には気づかなかったが、後ずさりする
ほどの美人だった。

神様はどうしてこんなに不公平なんだろう、と思
えるくらい美しかった。

甲はちょっと、神様を軽蔑した。

それもそのはず、いつもテレビで見ているニュー
スキャスターではないか。

同時に、ちょっと垢抜けすぎていないピュアさが
また魅力を増していた。

メイクは洗練されているが、地方出身で欧米の
クォーターだな、というのがわかった。

乙は恥ずかしそうに言った。

「今日のセミナー、すごく熱心に聴いておられ
ましたね。」

実は、甲はサクラだった。

もちろん、

「ええ、サクラですから」

とは答えなかった。

「いいとこ見せようと思ってね」

と甲は適当に答えて、焦って途中のフロアのボタン
を押した。

ジレンマがあったものの、仕事は仕事だ。

「おやすみなさい」

と言って甲は何とか3階で降りることができた。

返事はなかったが、何とか切り抜けた。

かなりもったいないことをしたと思ったが、職務を
まっとうできた。

これがプロフェッショナルというものだ。

振り返った。

乙も一緒に降りていた。

「あの、ごめんなさい。間違えてしまって・・・」

この瞬間、甲は人生の運をすべて使い果たしたと
悟った。

明日、死刑になってもいいと思えた。

「人間、誰にだって間違いはあるよ」


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★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
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2010年07月07日

どうしても好きになれない人。

「なんかさ、ムカつく人の相手ってどうしたらいいんだろうね」

乙は珍しく人前で愚痴を漏らした。

「職場でどうしても好きになれない人がいるの・・・」

甲には、そんな正直な乙がより一層かわいらしく思えた。

「飲み込んじゃえばいいんだよ」

「飲み込むって?」

「飲み込んじゃうというのは、そういう人をかわいらしく思え
るようになるってこと」

「え!?それ飲み込むっていうの?」

「ムカつくってことは、自分の中に似たようなことが過去に
あったか、今も持っているということだろう?」

「え~!!そんなこと絶対ないわ」

乙は懸命に抵抗した。

「人は自分自身が一番傷つくことを人に口走るというのは、
心理学の初歩だよ」

「そ、そうなんだ・・・」

乙はムカつく人を自分自身の過去に照らし合わせてみた。

確かにそのとおりだった。

中には小学校低学年まで遡って反省すべき点が思い出す
ことができた。

中にはつい先日の自分が同じことをやっていたことを思い
出して苦笑いした。

その苦笑いが甲に見られたのではないかと、乙は恐る恐る
甲のほうを見た。

甲は何ごともなかったかのように、パソコンに向かって夢中
に原稿を書き進めていた。

まるでピアノを弾いているかのように書かれていた原稿の
タイトルは『どうしても好きになれない人』だった。

追伸.愚痴は言ってもいい。
ただし、世界一信頼できる強い男の前だけでなら。


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2010年06月30日

久々に、感じた。

甲は就職関係の執筆をしていた。

上智大学を卒業後、入社4年目で仕事を覚えてきた
女性編集者乙は、

「最近のサラリーマンは、年収もどんどん下がって
いるのに忙しくなってきてますものね。体も持たな
いでしょうし、中間管理職になると上と下から板挟
みで、そりゃフラストレーションも溜まりっぱなしだ
と思いますよ」

とわかった風なことを言った。

「人がフラストレーションを溜めるのは、過労のため
でも人間関係でもないよ」

甲は静かに囁いた。

「え!?」

乙は驚いた。

編集者は経営コンサルタントと同じで、ちょっと仕事
を覚えてくると滅多に人に反論されることがなくなっ
て勘違いを始める二流のお利口さんが多い。

内心、乙は「この私に反論するの?反論されるのは
久しぶり」だと感じた。

0から10まで生み出してくれた素材を50や60
まで育て上げることができるのは、0から10まで
生んでくれた人がいるという感謝を忘れたらおし
まいなのだ。

それにしても・・・いったい、何なのか早く知りたかった。

「あの・・・」

いつもは強気の乙が遠慮がちに甲に言った。

「すべてのサラリーマンは、自分の才能がもっと活
かせる仕事があるのではないか、自分はこのまま
人生終わってしまうのか、というところでフラストレ
ーションが溜まるんだよ」

甲は間髪入れずに即答した。

反論の余地がなかった。

業界では伸び盛りで注目の元気な会社だったが、
甘ちゃんだったと気づかされた。

社長を含む全社員が束になっても甲には敵わない
のは瞬時に悟った。

本質を衝かれるのは、どんなことでも気持ちがいい
ものだと乙は感じた。

久々に、感じた。


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2010年06月23日

知らないはずなのに。

また謎の手紙だった。

乙と名乗る女性からだった。

乙はいつも書籍についてコメントをくれる。

しかも出版していつも1週間以内に速達で届けられる。

名前は書いてあるが、住所が書いていない。

消印もいつもバラバラだった。

あるときは都内、あるときは、湯布院、またあるときは
那覇だったり旭川だったりした。

しかも、いつも筆で

ここがよかった!

という短いコメントが大きな達筆な文字で書いてある
だけなのだ。

今回はこうだった。

「『20代で伸びる人、沈む人』よかったです。
一番よかったのは、オビです。
伸びる20代は、陰口を言われる側。
沈む20代は、陰口を言う側。
運がよくなるには、できるだけたくさん陰でボロクソ
に言われることですね。
運が悪くなるには、評論家になって陰でできるだけ
たくさんボロクソに言うことですね。」

そしていつも追伸が書いてあった。

いつも、追伸のほうが長かった。

追伸こそが、本当のメッセージだった。

甲はこの追伸のメッセージにいつも燃えた。

そして早朝4時過ぎの青山通りの交差点で信号待ちを
しているときに、夜明けに映える六本木ヒルズに魅了さ
れながらある誓いをした。

「顔も知らない乙のために、続編を書こう」

3分後、部屋に戻って30時間ぶっ続けで続編を書いた。

編集長にそのままメールした。

2分後に返信が届けられた。

「お待ちしておりました。これでいきましょう!」

同時に、乙の顔が浮かんだ。

知らないはずなのに。


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2010年06月16日

フィクションが、99%。

「あなたの『1%ノンフィクション』ってブログ、全部実話
じゃないの?って噂なんだけど」

乙は流し目で言った。

「1%ノンフィクションというのは、フィクションが99%と
いうことだろ」

甲は同じことを聞かれてばかりでウンザリするように答
えた。

乙はここぞとばかりに言った。

「じゃあ1%はホントってことじゃん」

甲はまたウンザリして淡々と答えた。

「1000文字だとすれば、本当のことはたった10文字
ってことだろ?そんなの下手すりゃ、
“キャビンアテンダント”という単語1つでおしまいだろ」

乙はネイルサロンで手入れしたばかりの細長い指を
折ってつぶやいた。

「キ・ャ・ビ・ン・ア・テ・ン・ダ・ン・ト!・・・ビ、ビンゴ!
ちょうど10文字ね!さすが!」

乙は、はしゃいだ。

「キャビンアテンダントか・・・」

乙は妙にこだわった。

「今のこれもブログに書いてみてよ。1%ノンフィクション
にしてさ」

甲は乙に監視されながら目の前で『99%フィクション』
を書かされた。


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2010年06月09日

お嫁さんにして!

「ねぇ・・・」

乙は質問した。

「甲はどうして今の会社に入ったの?」

甲は即答した。

「辞めるのに何の未練もなさそうだったから」

乙は溜め息をつきながら驚き呆れて返した。

「そんなんで面接、よく通ったわね」

「いや、面接でも60歳のお爺さんになってから社長
になっても仕方ないので3年以内に辞めますって、
そのまま正直に思ったこと言ったんだけど、結局は
信じてもらえなかった」

それはそうだ。

どこの学生が面接でそんな馬鹿な回答をするだろう。

しかも甲は筆記試験免除の幹部候補生コースとして
の採用だった。
 
たった2回の面接で内定を出されて、どこでも好きな
勤務地と職種を選んでいいとまで役員面接では言わ
れた。

47都道府県すべてに支店支社が散らばっており、
従業員7800人を抱える証券会社だった。

それは甲の配属を見れば一目瞭然だった。

地域採用の事務職員だった乙は勇気を振り絞って
言った。

「転勤になる前に辞めちゃうのかな?」

甲は乙の勇気など微塵も感じずに、目をキラキラ輝
かせながら答えた。

「わからない。すべてが将来本を書くためのネタ集め
だから。1人でも多くの人の喜怒哀楽を肌で感じて、
最終的にはその人たちにも目にすることができるよう
に世に出したい」

乙は甲の勢いでずっと堪えていたひと言が遂に言
い出せなかった。

「お嫁さんにして!そして私を小説のヒロインにして」

甲は翌月、会社を辞めた。

誰にも相談せずに、辞めた。

同期のほとんどは内心、喜んだ。

職場のほとんどの人間が内心、ホッとした。

ごく一部を除いては。


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2010年06月02日

ラグジュアリーマンションのコンシェルジュから観た景色。

乙はラグジュアリーマンションのコンシェルジュだった。

2重のカードキーがかかっているマンションのフロント
には24時間体制でコンシェルジュが2人座っている。

毎日座っている乙の視点からは様々な人間模様を観
ることができた。

1人ひとりについて1冊ずつ本が書けるくらいだった。

ラグジュアリーマンションはプライバシーを大切にした
い住人が多い。

実際にテレビで見たことのある住人も珍しくない。

だから必要最小限しかマンション内では会話がない。

お互いプライバシーを大切にしたいもの同士の暗黙の
了解なのだ。

もちろん普通のサラリーマンなど1人もおらず、真昼間
からこの人は一体何をやっているのだろう・・・という住
人が多かった。

まさに違う惑星の住人たちだった。

ファッションやビヘイビアの勉強にもなった。

そんな中で最近入居してきた甲がひと際目立った。

甲はいつも待機しいてるコンシェルジュに元気な声で、

「行ってきます」「ただいま」

と声をかけた。

普通の住人は軽く会釈をすればいいほうで、

「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」

と小さな声で返事があれば奇跡だという。

瞬く間に甲はコンシェルジュの内で有名になった。

コンシェルジュは計6名が24時間365日交代制でこな
していた。

もちろん全員良家のお嬢様ばかりである。

乙の父親は大手生命保険会社の重役で東洋経済新報
の役員四季報にも毎年名前が載っていた。

乙は甲に興味を持った。

今までは暇つぶしに目の前をただ通過していくだけの
住人に対して、この人はどんな人だろう、仕事は何を
しているのだろう・・・と連想することはあった。

しかし今回は違った。

乙は嬉しさのあまり、試行錯誤の上で甲のために特別
なあいさつを考えた。

甲がいつものように本を脇に抱えながら早歩きでエレベ
ータールームから出てきて一瞬だけ乙としっかりと視線
を合わせ、

「行ってきます」

と声をかけた。

乙はこのとき初めて勇気を振り絞ってマニュアルにはない
あいさつを返した。

「行ってらっしゃいませ」

いつもより2秒ほど長く目を合わせることができた。

乙の心臓の鼓動が高まった。

それはまるで乙が学生時代にトライアスロンに初参加した
スタート直前の緊張感に似ていた。

数時間後、甲はタリーズコーヒーのペーパーカップと、1冊
の本を脇に抱えて戻ってきた。

本のタイトルがホンの一瞬、チラリと見えた。

『不思議の国イタリア』

と書いてあった。

ますます乙の頭を混乱させたが今度は乙から先に、

「お帰りなさいませ」

と言ってみた。

甲はいつものように、

「ただいま」

・・・とは言わなかった。

少し驚いた表情で間をおいて、

「ありがとう」

と乙に返してくれた。

そのまま颯爽とカードキーでエレベータールームへと
消えて行った。

乙は甲にますます好奇心を募らせた。

毎日昼過ぎにカジュアルな格好で出かけて、しばらく
してまた戻ってくる。

何よりも毎日が大学生のようなイキイキとした顔をして
いたのが乙にとってすこぶる新鮮なことだった。

甲の仕事はいったい何だろう・・・

コンシェルジュを統括する粋なスーツを着こなしたアラ
フォー美人チーフが、乙の肩を後ろからポンと叩いて、
ハスキーな声で囁いた。

「フフ、甲さんはね、・・・」


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2010年05月26日

早く次の誕生日こないかな。

乙がオードリー映画の中で最もお気に入りは、

『ティファニーで朝食を』

だった。

ティファニーというブランドが好きなのもさること
ながら、実際には映画のどこにもティファニーで
朝食をとるシーンがないところが好きだった。

ティファニーで朝食をとるシーンがないのにタイ
トルが『ティファニーで朝食を』以外にないと思
えるところがよかった。

甲も『ティファニーで朝食を』が好きでよく観た。

ただ理由は少し違った。

ジョージ・ペパード演じる売れない作家が登場
するところが好きだった。

甲は売れない芸術家、売れない作家が登場
する映画はそのシーンだけでも繰り返し観た。

まだDVDではなくビデオの時代に、テープが
擦り切れるほど繰り返し観た。

これからの自分が立ち向かわなければならな
い壁をあらかじめ教えてもらえるようで何とも
快感だったのだ。

この日は乙の誕生日だった。

ホテルの部屋には巨大スクリーンとビデオデ
ッキが装備されていた。

『ティファニーで朝食を』

を二人揃って初めて部屋で鑑賞した。

朝食はルームサービスを利用した。

甲は乙にプレゼントでフランク・ゲーリー
デザインしたくねくね指輪を渡した。

包装と箱を見ればティファニーであることは一
目瞭然だった。

ただくねくね指輪はちょっと個性的であまりに
意味ありげだった。

乙は、

「アンバランスだけど、すごく素敵ね!」

と四の指に挿して朝陽に手をかざした。

甲は、

「ほら、左下の魚のオブジェ」

と部屋の大きな窓から下をのぞかせた。

乙は言った。

「・・・フィッシュ・ダンス?」

「そう、あのフィッシュ・ダンスをデザインした
デザイナーだよ」

フランク・ゲーリーもまた若いころ、成功には
恵まれなかった。

甲は来年の誕生日には自分の処女作をプレ
ゼントすることを心に誓った。

甲のその想いはフランク・ゲーリーのことを調
べれば調べるほどに乙の心に沁みた。

「早く次の誕生日がこないかな・・・」

と待ち遠しかった。

2人にとって歳を取ることは悲観することでは
なかった。

時間が早く過ぎて歳を取ることは2人にとって
実に好ましいことだった。

最高の人生だった。


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2010年05月19日

濡れない女

甲は傘をさすのが嫌いだ。

そもそも傘を持っていない。

誕生日プレゼントにもらった傘をすべてなくしてしまった。

でも傘を持たない理由は他にもあった。

ハリウッドスターたちが土砂降りの中でも傘をささずに
そのままずぶ濡れになって歩く姿に憧れていたからだ。

だからいつも雨が降ると嬉しい。

スーツを着たサラリーマンは普通、

「ちぇっ、雨かよ、まったくついてないな」

と言うが、

甲は喜々として様々な俳優をイメージしてわざと濡れな
がら歩く。

女性は一般に天気予報に敏感で天気が怪しい日には、
必ず鞄に傘を忍ばせている。

しかし乙は違った。

乙は甲が知っている女性の中で唯一、傘を持たない女性
だった。

上質でお洒落な身だしなみをしているにもかかわらず、
まったく気にしないところがまた男前でいい。

上下ともに純白のスーツ姿がよく似合う女性だった。

乙とはよく雨の中を2人で傘をささずに歩いたものだ。

傘をささずに歩くといいことが2つあった。

普段から歩くのが速くなり動作が機敏になることと、
雨宿りのためにお洒落な店を見つける力がつくこと。

頭の回転が速くなるのだ。

・・・しかし不思議なことが1つだけあった。

なぜか同じように歩いて同じだけ雨を浴びているのに、
いつも雨宿りのカフェに入って落ち着いてお互いの顔
を見ると驚くのは乙だけあまり濡れていないということ
だった。

もちろん甲はバカ正直にそのままグショグショだった。

土砂降りの雨の中を傘をささずに堂々と歩くのはカッコ
いい。

でも土砂降りの雨の中を傘をささずに歩いてきたのに、
ほとんど濡れていないのは更にカッコいい。

身長172cmの乙は女優志願だった。

コイツなら本当に女優になれるかもしれない、甲は思った。

24歳だった。


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2010年05月12日

Bカップですけど・・・

甲のパソコンにメールが届いていた。

件名は、

「Bカップですけど・・・」

と書かれていた。

またスパムメールだと思って削除しかけたところ、
何やら本文が書いてあった。

背筋がゾッとした。

***********************
甲様

前略ごめんください。

このメールはスパムではありません。

お久しぶりです。

乙です。

いつも楽しくブログを読ませていただいております。

相変わらず鈍感さと失礼さは絶好調ですね。

この際お断わりしておきますが、

私はAカップではなくBカップです。

二度と間違えないでください。

ところで、
あの抹茶アイスは本当に美味しかったです。

よろしければまた連れて行ってください。

何度でも私の“ありがとう”お聴かせ致します。

                          かしこ

追伸.7年前から東京に出てきて六本木で小さな
レストランを経営しています。
ただし大食いで下品な人はお断わりです。

追伸の追伸.出版がんばってますね。
いつも行きつけの書店で立ち読みで済ませています。

***********************

魔の抹茶アイス以上にスパイスが効いていた。

さすがの甲もしばらく仕事に手がつかなくなった。

保険会社から講演オファーのあったテキスト作成は、
しばらく中断になってしまった。

「ん?」

甲は驚いた。

なんとこのスパイスの効いたメールには添付資料が
あるではないか。

心臓の鼓動が一気に高まった。

こんなに添付資料を開くのに勇気を求められたのは、
生まれて初めてのことだ。

結局開いたのは翌日の晩、それも最後の最後になっ
てしまった。


・・・・・・・・・・・・・・・


開いた資料の写真には、本棚に8冊の本が並べられていた。


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2010年05月05日

ウラのウラのウラ。

日差しの強い休日の昼過ぎ、心斎橋のホテルトラスティ
のカフェで、焼き立ての手作りクッキーをチョイスしてから
乙がちょっとストレス溜まった風に、

「なんか裏を読み過ぎの人って最近多くない?」

と話しかけてきた。

ここだけの話だが、乙のチョイスというのはいつも全種類
制覇のことだ。

「裏読み過ぎないのもサラリーマンとしては失格だけどな」

甲があまり真剣味がなさそうに返事をした。

「甲に言われたくないわ!裏読み過ぎない超鈍感なところ
があなたの裏なのよね」

甲はようやく興味を示した。

「それ、褒め言葉?」

「ムッカ!ああ、その余裕かましたとこ・・・好きよ」

乙はじれったそうに言った。

「裏の裏までは誰でも読めるけど裏の裏の裏までくると将棋
の名人クラスの心のヨミが求められるのよね」

そういえば乙は文学部で心理学を専攻していた。

「『氷の微笑』観た?」

乙の心理学の授業が始まりそうだ。

「観たよ!ちゃんと映画館で」

甲は得意気に答えた。

「誰と?」

「・・・」

「冗談よ、そんな昔の話は興味ないわ。全然」

というジョークもはさんだ上で乙は続けた。

「あの映画の凄いところは結局シャロン・ストーンは犯人では
なかったところなのよね」

「そ、そうだったね(そうだったのか・・・!)」

「・・・本能が強くて欲望に忠実でありのまま正直で嘘がない。
これが多くの刑事たちを困らせたのよね」

「ああ、なるほど。1000人中999人の凡人は裏や裏の裏を
考えるからね」

甲はちょっと得意気にまとめてみた。

焼き立てオリジナルクッキーを7種類すべて乙一人で平らげて
から最後にため息をつくように言った。

「ハァ・・・似た者同士ね」

「似た者同士・・・ですか」

さすがの甲も100%純粋な褒め言葉でないことは、わかった。


...次代創造館、千田琢哉

★2010年4月刊『20代で伸びる人、沈む人』
★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

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2010年04月28日

魔の抹茶アイス

甲は学生時代いつも最初のデートには焼き肉
バイキングと相場は決まっていた。

焼き肉バイキングはその名も「スタミナ太郎」

制限時間は90分。

焼肉以外にはバラエティーに富んだお寿司も
あった。

もちろん定番のデザートもあった。

「うわ~、すごい!ありがとう」

乙は感激でAカップの胸を膨らませた。

さすがエアロビクスのインストラクターだけあって、
体脂肪率は女性にもかかわらず15%ほどを維
持しており、焼肉はほどほどにしてヘルシーな
お寿司を頬張っていた。

「おいしい!ありがとう」

乙は暇さえあれば愛くるしく「ありがとう」を連発
する本当に憎めない女性だった。

甲がここに連れてきたのには訳があった。

デザートでおいしいと大人気の濃厚な魔の抹茶
アイスを食べてもらうためだった。

甲はまだまだ食べ足らずにひたすら焼肉を焼き
まくっていたが、乙はお寿司を3皿ほど食べて
野菜サラダを盛り付けてきてから、

「ありがとう。ホント、もうお腹いっぱいだよ!」

と満足そうに微笑んだ。

甲はすかさず、

「デザートは別腹だろ?ここの抹茶アイス天下
一品だからな」

ジュージュー焼肉を焼いている最中に席を立った。

ちなみに抹茶アイスが美味しくて評判だったのは
本当だった。

乙は甲が食欲よりも自分のことを気遣ってくれる
やさしさにちょっと不自然さを感じながらも、久しぶ
りのそのやさしさが新鮮で嬉しかった。

「ありがとう、今日はやさしいのね」

乙は甲がニヤニヤしながら運んできたてんこ盛り
抹茶アイスに感激した。

実は抹茶アイスとまったく同じ色のお寿司用のワ
サビがたっぷり混ぜてあったのだ。

甲はいつもこのいたずらをして相手の反応を見て
は楽しんだ。

笑いを必死でこらえながら乙の表情を見ていた甲
は次第に心配になってきた。

乙がまったく魔の抹茶アイスに反応せずにニコニコ
しながら最後までペロリと平らげてしまったからだ。

「ちょっと変わった味ね」とも「濃厚すぎたみたい」
とも言うことなく顔色一つ変えずに、

「ありがとう!すっごくおいしかった」

と満面の微笑みで言われてしまった。

乙のような反応は甲にとって完璧な想定外だった。

さすがに、

「ワサビ大丈夫だった?」

と間抜けな質問などできるはずがなかった。

トイレに行くふりをしてワサビをちょっと味見してみ
たが震え上がるほどワサビそのものだった。

その後甲はカリスマ・インストラクター乙に主導権
を握られ続けることになった。

「ありがとう」といわれる度にドキリとした。

そして魔の抹茶アイスのいたずらも乙を機にピタリ
とやめた。

乙はソムリエの資格も持っていることも判明し、味
覚がおかしいはずもなかった。

恐るべしカリスマ・インストラクターの乙だった。


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2010年04月21日

最後の日

MARGARET HOWELLの洗練された黄土色の
コートは長身の乙をいっそう惹き立てていた。

今まで見たことのないコートだった。

乙のメイクは今までの中で一番きれいだった。

「手、つないでいい?」

乙は甲の顔を見上げて言った。

甲は手をつないで歩くのが大嫌いだった。

自分の歩くペースを乱されることを酷く嫌うその
甲の姿勢は職場でも賛否両論だった。

ただプライベートにそれを持ちこむのにはかなり
無理があったようだ。

乙は頭を甲の肩に寄せた。

そして出逢った頃、2人でよく聴いた歌を元歌手
志望だった乙は1人で口ずさんだ。

乙と初めて出逢った雨の日が甲の頭の中でフラッ
シュバックした。

甲は乙がこんなに歌が上手かったのかと改めて
驚かされた。

途中からかすれた声になったが、それはあたかも
もともとかすれた声で歌うべきであったかに思えた。

乙は間違いなく今までで一番輝いていた。

ほとんど言葉を交わすことなく過ぎた一夜だった。

同時にこれ以上深く話し込んだことはなかった。

朝陽を背にしながら乙は最高の笑顔で微笑んだ。

2人は悟っていた。

今度こそ本当に最後であると。


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2010年04月14日

ハッピーバースデー

「誕生日、おめでとう」

甲は乙にプレゼントを渡した。

「わあ、すごい!」

甲は大手投資顧問会社に勤めるサラリーマンで、
ちょうど30歳の誕生日に1冊目の本を出した。

タイトルは、

『これは買い!とお客様が殺到する銘柄』

だった。

甲は乙の名前を入れてサインを書いておいた。

乙はあまりの感激に涙した。

数回にわたるゲラチェックはすべて乙がやってくれ
たからだ。

何十ヶ所も誤字脱字を見つけてくれた。

でも本当のプレゼントは本でもサインでもなかった。

それは翌朝甲が乙と別れた後にメールで教えてあ
げた。

「プロローグを読んでみてください」

乙はさっき別れたばかりなのに珍しく甲からメール
着信音があったことに驚いた。

電車の中でプレゼントにもらった本のプロローグを
何度も読み返した。

さっぱりわからなかった。

「何か暗号でもあるの?いったい何?」

乙は我慢できずにちょっとイライラして家に着く前
にメールを返した。

甲からはそれきり返信がなかった。

・・・・・・・・・・・・

日付が変わる1分前、甲から返信があった。

「第4段落14行目に乙の名前が隠れてます。
23時59分キミが本当に生まれた時間だね。
ハッピーバースデー。」

甲は自分の処女作に乙の名前を暗号で入れてく
れていた。

乙は涙が止まらなかった。

プロローグは涙で滲んだ。

4月14日23時59分。ハッピーバースデー。


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2010年04月07日

想ひでの薫り

「甲の部屋、本の、・・・匂いがするね」

初めて甲の部屋に招かれた乙はそう囁いた。

甲も乙も大学生だった。

甲の部屋にはビッシリと本棚が並べられていた。

正確にいうと本棚の中に甲は住んでいた。

2年生まではアパートの2階に住んでいたが、
1階の住人からクレームがあった。

「天井が近づいている」

というのだ。

甲は大家さんに連れられて1階の部屋の天井を
見た。

確かに天井が近づいていた。

原因はハッキリしていた。

本の重みである。

すぐに1階の住人と入れ替わった。

2年間で買いためた本は部屋の壁にびっしり並べ
られた本棚から溢れかえっていた。

甲は1階に移って安心し、さらに本の購入に拍車
がかかっていった。

仙台市内の一番町通りにあった丸善と金港堂に
は毎日欠かさず足を運んで本をどっさり買い込ん
でいた。

甲が卒業していなくなってからすぐにそのうち一方
が閉店した噂を聞いたとき、なぜか責任を感じた。

甲の部屋はすっかり図書館のようになっていた。

続けて乙は言った。

「そう、これ、図書館の匂いだわ」

甲は図書館の匂いをイメージしながら自分の部屋の
匂いを改めて嗅いでみた。

カビ臭い匂い?

「本のカビ臭いにおいって、何かいいよね」

乙はつぶやいた。

「カビ臭い匂いが?」

甲は部屋がカビ臭いと言われて怪訝な顔をした。

「うん、何かエッチな匂い・・・」

大学の文学部で美術史を専攻していた乙の清純な顔
と「エッチ」というストレートな表現のギャップが妙に印
象的だった。

10年後、パリからその時住んでいたアパートの写真が
送られてきた。

写真には、

「本のカビ臭い匂いは、想ひでの宝物です」

と書いてあった。

乙が結婚した便りだった。


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2010年03月31日

それだけのこと。

場所は六本木ヒルズに隣接するグランドハイアット
の喫茶ラウンジだった。

ケーキセットを頼んだ乙はひと通り平らげてから、
2杯目の紅茶を飲みながら言った。

「そうそう、前から甲に1つ聞きたかったんだけど・・・」

「いいよ」

甲は言った。

「人に嫌われるの怖いと思ったことないの?」

「あ、ちなみにこれ褒め言葉ね」

乙は目をキラキラ輝かしながら言った。

「怖いと思うかどうかわからないけど、少なくとも
意識したことはないなあ、何で?」

甲はありのままを答えた。

「何でだろうねえ・・・そんな人すっごく少ないと
思うんだけどさ」

乙は2杯目の紅茶を飲み干した。

「この人には認められたい、っていう人から認め
られている絶対的な安心感があれば周囲のこと
なんて気にならないんじゃないの?」

甲は即答した。

早く本質を衝いた結論を出したがるところが甲
の悪い癖だった。

会話そのものを楽しむのではなく、他人事のよう
に冷静に正解を追求してしまうのだ。

さっきまでランチセットのパスタを食べながら話が
盛り上がっていた隣の若いカップルもピタリと話
をやめて甲と乙の会話に耳を傾けていた。

甲は今までこれで数多くの女性を怒らせてきた。

女心がまるでわからない典型的な鈍感なヤツ
だった。

「そういえばモディリアニってフランスの画家も
生前はからきし絵が売れなかったのに、交際し
ていた美女たちからは才能を完璧に認めてもらっ
てたものね。それが心の支えだったのかしら」

乙は学生の頃交際していた東京藝大に通う、
画家志望の男性によくモディリアニの話をよく
聴かされたのだった。

甲は答えた。

「モディリアニは天才だったと思うんだけど、
本当に凄いのは最後の彼女だったジャンヌ
だと思うよ。モディリアニ本人よりも彼の才能
を命がけで信じて、愛してたわけだから」

乙と隣のカップルは驚きで沈黙した。

特に隣のまだOL2年目といった女性の方は
顔こそこちらに向けていないものの、真剣そ
のもので目の前のカレの存在すら消えてし
まっていた。

「モディリアニは自分の才能が本物かどうか
不安だったからそれを酒と女で誤魔化した
んだ。でも最後のジャンヌは本物だった。
だからモディリアニは役割を終えて死んだ。
彼女もその後を追って死んだ。
それだけのこと」

乙は思わず繰り返した。

「それだけのこと・・・」

隣のOL2年目も心の中でつぶやいた。

「え?それだけのこと・・・?」

乙もOL2年目も甲のことを「好きだけど嫌い」な
タイプだと思った。

「好きだけど嫌い」・・・この女心を数学でいうと
虚数のようなものらしい。


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2010年03月24日

綺麗なのは・・・

国内の往復のスーパーシートで同じキャビン
アテンダントに出くわすことがある。

甲は乙がキャビンアテンダントの中でも鮮明
に記憶に残っていた理由は簡単だった。

甲と乙は苗字が同じだったのだ。

ここのところスーパーシートの乗客には名前
を呼び掛けてサービスをしてくるようになった。

以前は最初に座席に座った時のみ声を掛け
られていたが、最近は食事の上げ下げやそ
の他すべてのやり取りにおいて名前を呼んで
くる。

その時乙は少し顔を赤らめながら、でも目を
そらさずに甲の名前を呼んだ。

自分と同じ苗字のお客さんを呼ぶというのは
最初は何とも恥ずかしいはずだ。

甲は他の乗客と違って必ず挨拶をされたら目
を合わせるようにしている。

他の乗客は照れ臭いのか新聞を読んでいたり、
仕事の書類に目を通したり、目を合わせてもす
ぐにそらしてしまう。

挨拶の際に目を合わせると必ずいいことがある
のにもったいない。

乙はわざわざ富士山が見える地点になると甲
の座席までやって来てくれて、

「今が一番綺麗に見えますよ、富士山」

と教えてくれた。

確かに別格的な存在である際立って美しい富士。

「本当に、綺麗ですね」

振り返ってしばらくしてから甲は言った。

「よかったです!そんなに喜んでもらえて・・・」

乙の笑顔はキャビンアテンダントのビジネス・
スマイルではなかった。

「いや、富士山じゃなくて・・・」

甲はついポロリと本音が口からこぼれた。

「えっ」

・・・・・・・・・

あの時の乙の笑顔は南青山のヨックモックカフェ
でスイーツを食べているときと同じ笑顔だった。


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2010年03月17日

地上256m

大阪南港にWTCタワーがある。

大阪府庁移転案が出たあのビルだ。

地上256mの展望台は有名だ。

大阪市内が360度ぐるりと一望できる。

甲は高いところが大好きで何度も訪れているが、
未だかつてこの場所が混んでいたことがない。

それがまたお気に入りだった。

乙と大人のかくれんぼができるからだ。

子どもの頃「泥棒と警察」という「ドロケイ」という遊び
が流行った。

泥棒は隠れながら逃げる。

警察は捜しながら追いかける。

なぜか無性に興奮した。

もちろん泥棒の方が遥かに楽しい。

追いかけるより追いかけられる方が楽しいのは
何も泥棒と警察だけではない。

地上256mでのかくれんぼはスリリングで爽快
だった。

展望台の真ん中にある喫茶も迷路のようにあちこち
から入口がある。

カップルが2人きりになれるように迷路のようなスペ
ースが工夫されて設置されている。

もちろん、はしゃいで走り回るわけではない。

一度甲はお腹の調子が悪くて隠れるふりをして、
トイレに入っていたことがあった。

10分くらい経っただろうか。

恐る恐る外に出ると乙の姿が見当たらなかった。

竹内結子似の乙はいつも警察役をやってくれた
ものの、探すのが凄くへたくそで本当に困った顔
をしてオロオロ彷徨っていた。

天性の方向音痴で探している自分が迷子になる
始末だった。

甲は見るに見かねていつも乙を背後から脅かし
て終わりを迎えるのだった。

ところが、いくら探しても見つからないのだ。

「あれ!?」

ドキドキした。

「怒って帰ったのかな」

泥棒と警察の立場すっかり逆転してしまった。

地上256mで迷子になってはかなわない。

すっかり甲は心細くなってきた。

突然、後ろから目隠しされた。

「つっかまえた~」

驚きのあまり甲は声が出なかった。

細長い指からは冷たい石鹸の匂いがした。

実は、乙もトイレにいたのだった。

ランチに隣のホテルで鉄板焼を食べたのが2人が
お腹を壊した理由だった。

この日に限らず、いつも焼肉の後には2人でお腹を
壊す。

それも込みで焼肉が好きなのだ。

甲が仙台にいた頃、生牡蠣にあたってまる1日中
トイレに入り浸ったことがある。

それでも懲りることはない。

そのリスクも込みで生牡蠣なのだ。

それが本当に好きだということだ。

乙はまるで焼肉と生牡蠣のような女性だった。

2人ともすっかり体を軽くして55Fからエスカレーターで
降りた。

地上256mの御手洗いは実に快感なものだ。


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2010年03月10日

幼馴染

乙はルームサービスの朝食シーザーサラダを
頬ぼりながら言った。

「昨夜の講演で、たくさん質問者がいたけれど、
うわっこれ意地悪な質問だな、って思った人が
いたじゃない」

「こんな質問していったい何になるんだろう・・・
という思いと、あなたがいったいどうやって答え
るのだろう・・・という期待が一杯になって」

コーヒーをふうふうしながら甲は答えた。

「えっと・・・誰だっけ?」

「え?憶えてないの?二人目のツンとした女性
経営者よ。周囲がドン引きしてたじゃない?」

「ああ、あの後ろの方に座っていたスラリとした
女性かぁ・・・」

「同性から見たら一目瞭然なんだけど、あの質
問は明らかにあなたを試してたのよ」

「そうなの?いかにもバツ2くらい経験してて津
田塾あたり卒業して肩で風切って生きてきたよ
うな若い頃職場の男性の誰もが憧れのマドンナ
だったって感じだね。
数年前に独立して女性ばかり集めて20人くら
いの会社をやってそうな・・・」

「何よ、ちゃんと憶えてるじゃない・・・」

乙はレタスを刺したフォークをピタリと止めて驚
いた表情で甲を見た。

甲の記憶力に驚いたのではない。

実はその女性は乙の幼馴染であり、すべてド
ンピシャに当てられたからだ。

乙は甲に内緒でその幼馴染に今回の講演の
招待をしていた。

ライバル心をむき出しにして勝負服で気合いを
入れてセミナーに臨んだ幼馴染はがっくりと肩
を落として何も言わずに会場を出て行った。

その後、幼馴染は今までとガラリと変わって、
女性っぽくなり会社の業績もますます向上して
いった。


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2010年03月03日

スローモーションの殺人

「フー」

甲は深いため息をついた。

乙はクスクスと笑って甲に言った。

乙がクスクスと笑ったときはいつも要注意だった。

「珍しいわね、ため息なんてついて」

乙は大学院で生物学を専攻する学生だった。

「ねえ、ため息をつくと周囲の人たちは早死にする
って話、知ってる?」

甲は言った。

「悪いけど今日はそんな作り話を聴いている余裕
はないよ」

乙はキリリと襟を正して真剣な表情になった。

「これは本当の話だから真剣に聞いて。私にも関
わってくることなんだし」

福島県出身の乙はいつもはホンワカとしている癒
し系美人だったが、真剣なときはゆっくりと目を閉
じて大きく深呼吸した後にぱちりと大きな瞳をまっ
すぐにこちらに向けるのが癖だった。

「人間のため息をガラス管に集めマイナス118℃
の液体酸素で液化さるの。それをモルモットに注
射するんだけど、どのような反応が出たと思う?」

乙の質問に甲は興味本位で当てずっぽうに答えた。

「死んじゃった?」

「た?」を言い終えると同時に乙は答えた。

「そうよ。数分後にね」

「注射した直後から急に暴れ出してそのまま逝っ
ちゃったの」

甲は驚いた。

モルモットが死ぬことに驚いたのではない。

乙の迫力に驚いたのだ。

「だから、私の前でため息をつくのはやめて。2人
で一緒に長生きしたいから。ため息はタバコと一
緒でスローモーションの殺人よ」


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2010年02月24日

他人と過去は、変えられる。

「ねえねえ」

乙がアールグレイの注がれたリチャードジノリの
アンティコチェリーマグを片手に耳元で囁いた。

他人と過去は変えられないけど、自分と未来
は変えられるって今日会社のセミナーで聴いた
のよ」

甲は興味を示して振り返った。

乙は続けた。

「それが濃紺のスーツを着たちょっぴりメタボが入っ
た初老コンサルタントが言ってたのよ」

甲は熱心に耳と傾けた。

一拍置いて乙はキッパリとこう言った。

「最後の質問で誰も手を挙げないから私がこう言っ
て一発ぶちまけてやったわ!」

乙は得意気になっていた。

「他人も過去も変えられると思います。女性は
惚れた男性になら簡単に変えられますし、男
も女も力をつけて影響力を持てば過去の失敗
も武勇伝にたちまち塗り変えられるからです」

甲は、

「お前、それってセミナーで一番いやなタイプの・・・」

と言いかけたが乙は遮った。

「なんちゃって」

特徴あるえくぼをつくって乙はそのまま続けた。

「そこまで嫌な女じゃないわ。ただ・・・」

その続きは甲は聞かなくてもよくわかった。

なぜならそれは、乙と甲の出逢いそのものだっ
たのだから。


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2010年02月17日

デジャブ:déjà-vu

「私、不思議な力があるの」

乙が言った。

「毎日のように実際は一度も体験したことがないはずな
のに、すでにどこかで体験したことがあると感じることが
頻繁に起こるの。しかも鮮明なカラー映像の記憶で」

「電車に乗った時に見上げた車窓の風景とか、オフィス
で交わした会話とか、物思いに耽ったときに思い浮かん
だアイデアとか・・・」

甲が興味を示した。

「それってひょっとしてデジャブってやつか?」

「そうなの。でも物心ついたときから当たり前だったから
みんなそうだと思っていたのね。でもそうじゃないことに
気づいて・・・」

「神様は人間に昔の記憶をほんの少しだけ残しておいて
くれるっていうからな。乙にはちょっと余計に残してくれた
んじゃないのか?」

乙はちょっとうれしそうに言った。

「え!?そんなこと初めて聞いたわ。いいことなのかしら」

甲は答えた。

「それはそうだろう。前にやり残したことを今回はヒントを
たくさんあげるから必ずやり遂げなさいっていうことだから」

乙はちょっと興奮気味に言った。

「じゃあ、私はそれだけ大切な使命を担って生まれてきたっ
てことなのね?」

甲は言った。

「そうだよ。でも乙は嘘をついてるな」

ギョッとして乙は振り返った。

「どうして?」

甲は言った。

「今、こうして交わしている会話もすべてデジャブだろ?」

甲は乙よりデジャブの達人だった。

乙の鼓動が高まった。

乙が目を瞑った表情はハッキリとデジャブだった。


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2010年02月10日

甘い生活

甲はホテルの喫茶ラウンジに女性と行くと、
いつもケーキバイキングを注文する。

自分にではない。

相手の女性のために、である。

乙はとにかくよく食べる女性だった。

ランチで体育会系の学生並の量をぺロリ
と平らげた後でも平気でケーキバイキング
で雑談しながら2時間食べ続けることがで
きた。

でもなぜか太らなかった。

あれだけ食べてもお腹は膨らまない。

いったいどこに入っていくのだろうかといつも
不思議だった。

甲はよく食べる女性が大好きだった。

それは乙がよく食べたからである。

甲はその乙のケーキを食べる表情が特に
大好きだった。

中でも乙の大好物はマカロンだ。

乙と出逢うまでマカロンの存在を知らなかった。

でも乙と出逢った初めてのホワイトデーで
PIERRE MARCOLINI のマカロンをもらった。

この世の中でこんなに美味しいものが存在
するのかと驚いた。

ベルギー生まれのマルコリーには、
ショコラティエ(チョコレート職人)として一流なだけでなく、
パティシエ(ケーキ職人)、グラシエ(アイスクリーム職人)、
コンフィズール(〈クイズィニエ:ジャム職人〉、
砂糖漬け菓子職人)の4つのディプロマを持つ天才だった。

それ以来、甘い生活から実に多くを教わった。


...次代創造館、千田琢哉

★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

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2010年02月03日

1/260

某地方都市で講演したときだった。

参加者としては珍しく女性が数人いて、その中で
もとびきり目立つ存在が一人いた。

それが、乙だった。

乙は視線をまったくそらすことなく微動だにせずに
真剣に聴いていてくれた。

講演の講師をするとわかることがある。

誰がどのくらい真剣に聴いていて、誰がどのくらい
理解しているのかも手に取るようにわかるというこ
とだ。

自分から参加したのか上司に強制的に参加させ
られたのかもわかってしまう。

これは自分が聴講している側にいては一生わか
らないことだ。

甲は講演の際にいつも会場の誰か一人に話しか
けるように心で決めて話している。

何百人の前で話していても実際には立った1人
にむかって話しかけているのだ。

このとき会場には260人が講演を聞きに来ていた。

でも甲は乙に向かって話し続けた。

乙だけのために。

もちろん甲もプロだ。

講演中は乙の顔はほとんど見ない。

会場内の誰一人としてそんなことには気づかない。

最後の拍手喝采の後、まるで風呂上がりのような乙
の恍惚とした顔がハッキリと見えた。

講演終了後のサイン会で長蛇の列の後、乙が最後
に並んでいるのが見えた。

後になって乙が40代半ばの女性社長と知った時は
本当に驚いた。

テレビの年齢当てクイズ番組で出たらバカウケする
だろう。

どう贔屓目に見ても30を超えているようには見えな
かったからだ。

ちょっと知的で大人っぽい28歳だった。


...次代創造館、千田琢哉

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★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
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2010年01月27日

お尻の穴まで美人。

乙と出逢ったのは銀座にある広告代理店のオ
ーナーと初めて行った高級クラブだった。

言い訳がましくなるが、甲がクラブに行ったの
はこのときが人生で最初で最後だ。

店員に

「お好みの女性は?」

と聞かれた際に自分でも忘れてしまうくらいに
思いつくまま適当に答えるとそっくりそのまま
の女性が隣に座ったのを今でも鮮明に憶えて
いる。

ホステスは全部で30人。

30人すべてに序列がある厳しい世界だ。

乙は今月入ったばかりの新人ということで紹
介された。

これは後に本当だとわかった。

甲はお酒が飲めないのでジンジャエールと
チーズの盛り合わせだった。

連れてきてもらった代理店のオーナーはお目
当てのホステスがいてすでにかなりのお金を
注ぎ込んでいたようだ。

オーナーが別れ際に言った。

「甲さんはこっち関係の店連れてくるのはあま
り効果ないみたいだね。どちらかいというと食
べる方かな?」

ということでそれ以来、そのクラブの1Fに入っ
ている有名な寿司屋で仕事の終わりにウニ丼
をご馳走になった。

相手が何に一番目がないのかを鋭く観察して
いるのだった。

甲はいろんな業界を相手にビジネスを展開して
きたが、もっとも進んでいてもっとも遅れてい
るのもこの広告業界だった。

ところが、甲はこの1回で乙を仕留めた。

費用総額0円。

戦略「ただひたすら話を聴いて質問されたことに
一生懸命に答えるだけ」。

薄暗い店で見る乙はとびきりの美人だったが、
外で見る乙は遥かにそれを上回っていた。

某テレビ番組でクラブのホステス特集をやって
いたときに乙が№1ホステスとして出ていたが、
隣にいる某女優を凌駕していたと感じたのは甲
だけではないはずだ。

甲は鳥肌が立つほど嬉しかった。

本物の美人は顔以外もすべて美人だという
ことを甲は乙から教わったのだった。

甲はもうこれで一生モテなくてもいいと思えた。


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★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
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2010年01月20日

女性はみんな、天の邪鬼

甲は就職活動で築地と銀座に寄った帰り、銀座三越
前に立っていた。

田舎者の甲は

「ここがあのマクドナルドの第1号店だったんだ・・・」

と興奮でしばらく身を震わせていた。

将来起業をすると決めていたからだ。

実際に就職活動はほんのおまけで本で読んだ数々
の偉人たちの軌跡を確かめに来ていた。

交通費はすべて面接を受ける会社から出してくれ
ていたから人生で最初で最後の最高のぜいたく
だった。

後に入社することになる保険会社の意思確認の
最終面接と甲が尊敬する人物が出身の大手広告
代理店の2次面接を受けた帰りだった。

社会見学を終え、地下鉄に潜る直前に何かを感
じた。

振り返ると粋な純白のスーツに身を包んだ乙だった。

最初はどこかの女優がテレビのCMでも撮影して
いる最中なのかな、と思ったくらいだ。

今でもいったいどうして振り返ったのかはわからない。

とにかく強烈な何かを感じたのだ。

本当は日帰りで新幹線やまびこ号で帰る予定だっ
たのだ。

乙は高知県から上京して都内の私立女子大に通う
お嬢様だった。

日本の女子教育の先駆者と評価される歴史に名を
残した女性によって設立された学校だ。

当時、高知県といえば甲の中では広末涼子ちゃん
と土佐犬しか頭になかった。

社会人になってからある大富豪に聞いた話だが、
芸能関係に勤めるカメラマンの話では、広末涼子
ちゃんは星の数ほどいるアイドルの中でも突出した
オーラを発していたらしい。

乙はどちらかといえば鈴木京香似だった。

高貴で気丈なタイプに見えた。

周囲もわざわざ振り返っていく。

実は乙も甲と同じ広告代理店を受けていたという。

話していくと甲とグループ面接で一緒だったらしい
ことが判明した。

乙には申し訳ないが、甲はまったく記憶になかった。

「あなたって本当に面接で言っていいことと悪いこと
の区別がつかない典型的な失礼なタイプね、入社
する気ないってまるバレよ・・・もうウンザリ」

「あなたみたいな人はお試し採用で毎年1人か2人
企業で採用されやすいらしいけど・・・」

「そのスーツ、ぜんぜん似合ってないわよ」

乙はまだ会ったばかりなのにのっけから結構失礼
かつ厳しい言葉を浴びせてきた。

スーツの上着の三つボタンを三つともすべてしてし
まうのはお洒落のタブーだということもこのとき初め
て知った。

新幹線は翌日の最終便に変更になった。

不思議だ。

「女性はみんな天の邪鬼」って英訳するとどうなる
かわかる?

乙は今、高校で英語の教師をしている。


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2010年01月13日

趣味と仕事

「趣味は何ですか?って聞いてくる人いるじゃない。
バッカじゃないの?っていつも私、思うの」

乙は言った。

乙の発言にはいつも迷いがない。

「ハハハ、それは何で?」

甲は笑いながら質問した。

「だって趣味なんてとっくに仕事にしてるに決まって
んじゃんか、人生を楽しんでる男も女も全員」

乙は続けた。

「野生のライオンは獲物を追いかけながら走る筋肉
を鍛えるわけでしょ。わざわざ筋トレなんてしている
わけないじゃない」

「それはそうだ」

甲は聞き入った。

「運動不足なんてエッチで十分カロリー消費できる
わけだし、ジョギングもウォーキングも意味ないじゃん」

趣味という概念自体が自信のない人間の発想だと
いうのが乙の持論だった。

趣味は趣味だからこそ面白いのでは?という甲の
質問に対する回答はこうだった。

「趣味と仕事を分けるほど人生の無駄遣いはない」

乙はいつも極論だがけっこう的を射ていた。

趣味はナニナニと答えるのは、就職試験のために
B級資格を慌てて取得するようなものだ。

実は甲も「趣味は何ですか?」と聞かれていつも困っ
ていた1人だったのでちょっと安心した顔を見せた。

「・・・だから惚れたのよ」

乙は言った。


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2010年01月06日

ピュアな営業部長

「職場でやたら熱血漢で政治家志望の人がいるの」

乙は言った。

「政治家は自分でなりたいからなるんじゃなくて、
周囲から推されて止むに止まれずなるものでしょ」

って言ってやったわ。

「そしたらグウの音も出なくなって大人しくなっちゃっ
たの、いつも自信過剰で職場でも嫌われているヤツ
だから、すっごい快感だったわ」

「相変わらず厳しいな、そんなんだといつか痛い目に
遭うぞ」

甲は言った。

「あなたのブログに書いてあったことよ」

乙は少し意地悪な顔で言った。

乙の部屋には甲の本が全種類並べられている。

しかも同じ本が何冊も並べられてる。

「うれしいけど、そんなに買ってどうするの?」

「私の友だちが部屋に来たらいつも本棚の本を
読むの。そしたらあなたの本を読み込む時間が
やたら長いのよ」

「それじゃ、何のために部屋で友だちと一緒にいる
かわからないな。お互い口を利かずに黙々とゲーム
をやり続ける現代っ子と変わらないじゃないか」

「だから、あげちゃうのよ。それあげるよってね。
ちなみにこれもあなたのブログに書いてあったことよ」

乙はちょっと自慢げに言った。

甲はクライアントからもよく自分が講演やブログや本
で発信したことを逆に教わることがある。

「あなたの本を広めたいって気持ちと、あまり広まり
過ぎても困るって気持ちがいつも複雑に絡み合うの
よね」

ピュアな営業部長だった。


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2009年12月30日

ジェラシー

甲は同性から嫌われるタイプの女性が好きだ。

乙はその典型だった。

女性が同性から嫌われる理由はたった1つ。

ジェラシーである。

それ以外に理由はない。

学生時代、美人で勉強もできてスポーツ万能と
いった女子生徒がクラスに必ず1人いた。

普通の女子生徒であれば許されることでも彼女
は許されない。

そうしたジェラシーのシャワーを浴びておくと、社会
に出てから180°転換した人生が送れる。

他人の気持ちがわかるから。

乙は同性からのジェラシーに慣れ切っていた。

しかし孤独ではなかった。

社会人になるとそうした優秀な女性はみんな成功
しているから相互のネットワークも強いのだ。

でもそうした女性も本当は気が弱い。

驚くほどに弱い。

それは他の女性と何ら変わらない。

乙も甲の前だけではいつも少女だった。


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2009年12月23日

男前の女性

乙はすごくかっこいい女性だった。

女性は普通男性におごられるものだと思っている。

しかし乙はいつも割り勘だった。

仮におごられても次はお返しする、というスタンス
だった。

いつもおごられてばかりいる女性は次のことを知っ
ておくべきだ。

おごられる側は自分の分だけご馳走になったと考
えがちだが、ご馳走するほうは相手の分と自分の
分で2倍の料金がかかっている。

これが立場の違いということだ。

結局のところ、おごるほうのほうがその後の人生で
成功していることが多い。

2倍の人の気持ちがわかるからである。

甲は乙に対して今までの女性の誰よりも敬意を払っ
ていた。

何もかもが男前だった。

乙のような男前の女性もいれば、支払になると決まっ
てトイレに席を立つ不細工極まりない男性もいる。

後に乙は某上場企業の50代半ばの社長と結婚す
ることになる。

まだ29歳のときだった。

上場企業の社長とて見る目がないわけではない。

乙の男前さに惹かれたに違いない。

甲はちょっと妬けた。


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2009年12月16日

眠り姫

乙は本当によく眠った。

まるで眠るために生まれてきたのではないかという
女性だった。

ここまで眠ってばかりだと気持ちがいいくらいだ。

甲と出逢ったのは深夜の大手チェーン店のレンタル
ビデオショップ。

レンタルビデオショップといっても最近は書籍も結構
たくさん売っている。

そこで立ち読みしていたのが乙だった。

モデル体型の容姿とは不釣り合いの難しい専門書
を熟読していた。

乙は理科系の大学院まで修了していた。

「研究室の昼夜逆転した生活が馴染んじゃって」

というのが乙の口癖だった。

しかし乙は昼も夜もよく眠った。

不思議なのはそれでいて料理や旅行、趣味もすべ
て人並み以上にこなしていたことだった。

「人は深く眠るために起きているのであって、起きる
ために眠るわけじゃないのよ」

というのが生物学博士の乙の持論だった。

17年ゼミという蝉の話も何十回とピロートークで聴
かされたものだ。

いつも話の途中で眠ってしまうのだ。

甲が眠り好きになったのは乙の遺伝子が影響して
いるのかもしれない。


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2009年12月09日

幸運のまちがい電話

甲は学生時代に幸運のまちがい電話を受けたことが
よくあった。

もちろん、女性からだ。

会社でもない限り、まちがい電話は毎日かかってくる
ものではない。

せいぜい1ヶ月に1度。

普通は1年に数回といったところだろう。

甲もその確率は同じだった。

しかし、ヒット率が大きく異なった。

大学4年間で間違い電話をきっかけに知り合った女性
は7人に上る。

その中で飛びきり美人が乙だった。

甲はまちがい電話に寛容だった。

そして必ず最後にひと言を加えた。

「まちがい電話、ありがとう。でも、本当にそれだけで
よかった?」

いつも、ここからどんどん話は展開されていった。

乙は言った。

「あのときの甲の電話って何か懐かしい感じがした。
おかしいのよ、初めてなのに。このまま話せなくなる
のはあまりに寂しいと思ったわ」

後に甲は一流の詐欺師になった。

いや、正確には詐欺師ではない。

相手は騙されたと思っていないのだから。


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2009年12月02日

クジラみたい!

「わぁ~、クジラみたい!」

真夏のある晩、外回りから帰ってきたスーツ姿の
甲の背中を払いながら乙は言った。

乙の真っ白でしなやかな手が自分の汗の残骸を
平気で触れるのは嬉しいが、恥ずかしかった。

真夏の日に一日中外回りをすると汗が乾いてその
上に汗をかき、幾重にも白地図が描かれる。

営業マンならだれもが一度は経験する。

酷いときには靴まで白地図が滲んでくる。

乙の「クジラみたい」は非常に上品な声だ。

乙は母子家庭で育ち、父親は幼少の頃に亡くなっ
たらしい。

誰もが知る大企業の重役だった。

乙の立ち居振る舞いのよさは育ちによるものなの
は明白であった。

単に上品というのではない。

やさしさが溢れていた。

愛情深かった。

甲より入社は5年先輩だった。

乙は短大を出てコネ入社だったから、実際には
甲より3歳年上だ。

乙は高校時代に恩師と内緒で付き合っていたと
いうから大胆なのだ。

「そんなこと言っていいの?」

甲は乙に言った。

乙は平然と答えた。

「いいのよ。人を選んでるしもう時効だから」

美人で愛情深いだけではない。

度胸も座ってた。

きっと男に生まれてきてもモテたに違いない。

甲はこの乙から社会人のスタートをイロイロ学んだ。


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2009年11月25日

1日を2回生きる。

金融業界は朝が早い。

8時までにはすでに全社員集まってミーティング
をしている。

甲はいつも朝5時台の始発の電車に乗っていた。

睡眠時間は毎日2時間半。

JR立花駅という鈍行列車しか停まらない兵庫県
尼崎市に会社の独身寮があった。

そこから大阪駅に出て地下鉄御堂筋線で心斎橋
まで行き、そこから歩いて5分でオフィスに着いた。

1Fと2Fには高級ブティックが入っていた。

まだ昔の心斎橋のご威光が残る一等地だった。

始発に乗ると、6時くらいに心斎橋に到着する。

8時までには2時間余裕があった。

その2時間が乙との毎日デートの時間だった。

平日はいつも終電にかけ込む日々であり、休日の
うち土曜日は夕方頃まで爆睡。

日曜日は資格試験の勉強。

新入社員の1年間はまさに怒涛の如く過ぎていっ
たものだ。

しかしあの頃があったから今があると断言できる。

乙との毎日の早朝2時間デートは生き甲斐だった。

朝6時の心斎橋の毎日を知っている人は少ない。

8時半を回るとあれだけの雑踏になるが、6時から
8時まではそれこそ人っ子ひとりいない、自動車も
ほとんど走っていない、綺麗な街だ。

特に四ツ橋まで散歩して時の堀江界隈のあの静
けさが好きだった。

夜のミナミより朝のミナミが本当のミナミなのだ。

朝6時から空いている秘密の隠れ家的なカフェを
知っている人など誰もいない。

甲はいつも杜仲茶。
※杜仲茶は甲が店に無理を言ってつくった幻のメニュー
 だった。学生時代から愛飲していた。

乙はいつもアールグレイ。

1年中2人ともホットだった。

もちろん真夏も。

・・・・・・・・・・・・

その後あの店を訪ねたけれど、もうなくなっていた。

甲と乙2人のためにギリギリで店を開けてくれてい
たのかもしれない。

責任を感じてしまう。

乙には朝の2時間は夜の6時間に匹敵するという
ことを教えてもらった。

あの頃甲は毎日2回の人生を生きていたのだ。


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2009年11月18日

鈍行

甲はせっかちだ。

エレベーター待ちのときには決まってボタンをパチパチ
何度も叩いているせっかち男がいる。

そんなことをしてもエレベーターが到着するスピードは
変わらないのに、である。

その典型が甲だった。

エレベーター内は人間社会の縮図である。

交通機関でも甲は最短最速で目的地に到着するのが
当たり前だった。

乙はそんな甲に一目惚れした。

一般にせっかち男は仕事ができる。

敵も多い。

乙は甲をドラゴンボールのべジータに見立てていた。

そんな乙もブルマに似て美人で頭もよかった。

おまけに、エッチだった。

乙は甲にたった一つだけ調教に成功したことがある。

それが、乙の自慢だった。

甲は乙と旅行に行く際だけは決まって素直に鈍行に乗る。

信じられないが本当のことだ。

プロセスは遠回りであればある程いい。

人生と愛する人との旅行においては。

プロセスが主であり、ゴールはほんの手段なのだ。


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2009年11月11日

二番目に好き。

甲は小学校3年生のときに乙からバレンタイン
のチョコをもらった。

それから甲はクラスでの乙の存在を認知する
ようになった。

まだホワイトデーも盛んではなかった時代でお
礼も何もしなかった。

乙は女子生徒の中でリーダー格であり、勉強
も運動も抜群にできた。

健康的な感じがする真っ白な歯を見せる笑顔
が素敵なピーターパン役のはまった相原勇似
の、ちょっとおませな女の子だった。

そのまま持ちあがりで小学校4年生になった。

何と甲は乙と一緒に学級委員に選ばれた。

甲はまだこの時点においても乙のことを意識
できなかった。

学級委員は放課後に残って様々な仕事をしな
ければならず、甲と乙は他には誰もいない教室
で黙々と居残って作業をしていた。

シチュエーションとしては最高だろう。

そんなときに乙のほうからの話題はいつも同じ
だった。

「甲くんはクラスで一番好きな子は誰?」

甲は10歳にしてこの意味がまったくわからずに、
毎回バカ正直に本当のこの名前を答えていた。

乙は急に不機嫌になり、「二番目は?」と聞いて
くる。

もちろん二番目なんて考えたこともないから、
これもバカ正直に

「わからない」

と答える。

それでも乙は答えるまで帰してくれない。

運の悪いことに一番目は乙がいつも一緒にいる
親友だったのだ。

しかも甲はそれほど深く好きだと思っていたわけ
でもない。

後の人生で甲は別の女性に

「甲くんのことは二番目に好き」

と言われる経験をする。

二番目に好かれるくらいなら、嫌われたほうが
マシだ、とここで初めて学ぶ。

同時にあの時の乙の悲しそうな横顔が鮮明に
思い浮かんだ。


...次代創造館、千田琢哉

★2009年9月刊『こんなコンサルタントが会社をダメにする!』
★2009年8月刊『尊敬される保険代理店』
★2009年8月刊『存続社長と潰す社長』
★2009年6月刊『継続的に売れるセールスパーソンの行動特性88』
★2008年9月刊『社長!この直言が聴けますか?』
★2008年6月刊『THE・サバイバル 勝つ保険代理店は、ここが違う』
★2007年10月刊『あなたから保険に入りたいとお客様が殺到する保険代理店』

投稿者 senda : 00:27 | コメント (0)

2009年11月04日

女木島-MEGIJIMA

桃太郎伝説の鬼ヶ島が実在の島であることを知る人は
少ない。

桃太郎に出てくる地名はすべて実在のものであり、
確認することができる。

鬼ヶ島の一つとされているものに、香川県高松市の高松港
沖合から4Kmの瀬戸内海に浮かぶ女木島(めぎじま)
という人口200人足らずの島がある。

今では島の子どもたちは海路で学校に通っている。

この島からは副総理やプロボクサーも生まれているのだ。

甲と乙は一度この島を歩いた。

四国最大の都市である高松からフェリーでわずか20分の
場所なのにまるで時間が止まっているように静まり返って
いた。

甲はいつも寂しい場所を二人きりで歩くのが好きだ。

しかも薄暗くなって寂しい場所が特に好きだ。

乙はいつもそれにつき合わされていた。

乙は本当は体力があるほうではなく歩くのは嫌いだったが、
甲と寂しい場所を二人きりで歩くことが好きになっていた。

それが二人きりになれることが唯一確認できた時間だからだ。

この日も殺風景な女木島の海岸沿いを半日かけて歩き回った。

郵便局もあったし休校になっている学校の体育館らしきもの
も目に入った。

まるでタイムスリップしたような別世界の空間で、数十年前の
昭和時代を彷彿させるようだった。

島民たちの家の壁には、
なぜかある共通の標語が書かれていた。

甲も乙もそれを目にしたが、お互いに黙殺した。

女木島から高松港への最終便は17:20と早目だった。

寂しいが故に幸せを感じることもある。


...次代創造館、千田琢哉

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投稿者 senda : 00:21 | コメント (0)

2009年10月28日

どらえーもん。(≒very good thing)

岐阜県各務原(かかみがはら)市に少年自然の家
という施設がある。

ここは市内では小学生の合宿研修施設として知られて
いる。

ウリは当時では巨大なプラネタリウムだった。

プラネタリウムは神秘的で恋に落ちやすい。

甲が小学校6年生の夏休み、市内の小学校の5年生
と6年生から各1人ずつ代表で選ばれて参加するとい
う1泊2日の行事があった。

そこで甲は選ばれた。

甲にしてみれば貴重な夏休みが奪われてしまい、正
直迷惑な話だった。

合宿では施設のすぐ横にある山に登ったり図画工作
をしたり星座を記憶したりと様々な課題をクリアしてい
くというものであった。

甲が一番苦手なタイプのでしゃばりなリーダー格で男
勝りなタイプの聞いたことのない小学校の女子生徒“乙”
に出逢った。

たった48時間の合宿にもかかわらず乙とはいかにも
気が合わなかった。

起床時間の際に乙が友人たちを引き連れて甲たちの
部屋に乗り込んできたくらいだ。

これによって両部屋の宿泊者全員が廊下に出されて
説教を食らったくらいだ。

翌日の昼過ぎに解散になるが、甲は乙ともう会わなく
てもいいかと思うと心底せいせいした。

何といってもそれまで生きてきた12年間の人生で最も
嫌いなタイプだったからだ。

その数日後に夏休みのプールで友人と泳いでいると、
腕っ節の強いので有名な担任の先生から声がかかった。

「甲ちゃん、自然の家の合宿楽しかったぁ?」

甲は思い浮かぶのは1泊目の夜に大目玉を食らったこ
とくらいなので、正直に

「夜、怒られました」

と答えた。

先生は、

「後から部屋に来い。どらえーもんやるわ」

と言った。

正直、甲は殴られるのかと思ったが“どらえーもん”
とは生まれて初めてのラブレターだった。

しかも、相手は乙。

封筒には恥ずかしげもなく担任の先生から甲にきちんと
渡すように赤ペンで明記してある。

中身には長い文章が綴られていたが、甲にはその隠喩
や遠回しな表現がさっぱり理解できなかった。

1ヶ月ほど返事をせずにいると再び手紙が学校に届いた。

甲は怖くなってまた無視した。

あれだけお互いに嫌い合っていたはずなのに理解できな
かったのだ。

担任の先生もからかいながら

「甲ちゃん、ちゃんと返事はしたか?」

と言ってくるようになった。

今にして思うと先生は結構真剣に甲に催促していた。

結局返事はしなかった。

二度と乙から手紙が届くことはなかった。

しかしその後まる4年経ってお互いに高校生になったある
日、甲と乙はばったり出くわすことになる。

二人とも、言葉を交わさずともお互いが誰なのかがわかった。

「あ、・・・」


甲はその後何年経っても女性をがっかり・うんざりさせること
を繰り返すことになる。

人生は、修行だ。


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投稿者 senda : 00:24 | コメント (0)

2009年10月21日

15歳だった。

中学の卒業式。

甲は友人と二人乗りで自転車で帰ろうとしたところ、
1学年下の乙に声をかけられた。

不良グループの間でもとびきり有名な女子生徒だった。

しかも乙の兄はこれまた甲の1学年先輩でこれがまた
ワルだった。

甲の記憶では乙とは一度も話したことはない。

乙はいつもつるんでいる不良仲間と3人で一緒だった。

「甲先輩・・・」

甲は自分でも予想だにしない行動を取った。

何と、驚きとともに恥ずかしさが勝って乙を無視して通過
してしまったのだ。

乙は今まで見たこともないような、愛らしい表情で手には
薄い黄緑色の封筒を持っていた。

「おい、オマエもったいない」

その後美容師としてがんばることになる友人は言った。

背中越しに乙の友人の声が聞こえた。

「ひどい」

確かにひどい。

人間として最低だ。

甲の人生において、もっとも思い出したくもない記憶だ。

・・・・・・・・・

翌年、驚くべき事件が起こる。

「あ・・・」

驚いた甲は言った。

真っ黄色に染まっていた乙の髪の毛は真っ黒になって
甲と同じ高校に入学してきたのだ。

別人のように知的な顔になっていた。

しかも・・・あの時いた3人中2人。

場所は、全学年共用の下駄箱スペースだった。

乙は顔を真っ赤にして目を逸らし、長い髪に手串を通した。

15歳だった。


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投稿者 senda : 00:07 | コメント (0)

2009年10月14日

立場逆転

甲は待つのが好きだ。

乙と待ち合わせをする際には、かならず待ち合わせ場所
を書店にしている。

甲はたいてい30分以上前から書店で立ち読みをしている
から、遅刻をしたことがない。

対して乙はいつも5分遅刻の常習犯だ。

仕事では甲は時間に厳しいが、乙の遅刻には寛大だ。

乙が遅刻すればするほどたくさんの本を読むことができる
からだ。

一度、乙が1時間以上の大遅刻をしたことがある。

それでも甲は怒らなかった。

怒らなかったどころか、夢中で立ち読みしていた。

いつも遅刻してきた乙のほうが怒るのだ。

「ねぇ~、まだ読み終わらないの?」

立場が逆転してしまうのだ。

甲は名残惜しそうに読みかけの本を閉じてレジに向かう。

今まで甲と付き合ってきた女性たちが甲に愛想を尽かし
て去っていくのは、デートの最中でも書店の立ち読みが
多いことだ。

歩いている途中で甲が

「あ、ちょっと寄ってく」

と言ったらおしまいだ。

最低30分は書店から出られない。

お洒落なカフェで女性が一方的に話しかけても、甲は買っ
た本が気になって仕方がない。

女性としては面白いはずがない。

これでいつも甲は付き合って間もない女性にフラれ続けて
きた。

大阪の堂島にあるジュンク堂は、甲にとって出逢いの場
でもあり、別れの場でもあるのだ。

ジュンク堂は本当の本好きが集まってくる。

他の書店と決定的に違うのは、ジュンク堂は図書館の匂
いがするということだ。

本の買える図書館なのだ。

図書館は神聖な場所であり、恋に落ちやすい。

映画Love Letterに出てくるヒーローとヒロインの同姓同名
だった藤井樹たちも図書館で恋に落ちた。

でも同時に図書館の恋は終わりやすい。

甲はデートのコースに必ず本屋を選ぶが、やがて女性
たちは待ち合わせ時間に来なくなる。

なぜなら、6時間以上遅刻しても催促してくれないから。

甲はそのまま黙々と立ち読みし続けているのだ。

乙との別れもやっぱり同じ原因だった。


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投稿者 senda : 00:53 | コメント (0)

2009年10月07日

あなたが二人いたらいいのに

乙は囁いた。

なんばパークスのステップガーデンでは様々なアトラクション
が繰り拡げられていた。

その喧噪の中、甲は乙の声がよく聞き取れなかった。

「え?今、何て言った?」

間抜けな顔を乙に向ける。

「何でもない」

乙は明るい笑顔で答える。

甲は乙の瞳がいつになくきらきらと輝いているのが印象的
だった。

甲は乙がいつになく機嫌がいいな、と感じた。

女性はすべて天の邪鬼なのよ。

8つ年下のキャビンアテンダントからピロートークで教わった
ことが甲の頭をふと過ぎった。

嬉しいときには不機嫌に見せる余裕があり、逆に不機嫌な
ときには気味の悪いほどやさしくなれる。

女性が無口になったらそれは何かが起こっている証拠だ。

それが女性だ。

男には二通りしかいない。

「あなたが二人いたらいいのに」

と言われたことのある男と言われたことのない男。

浮気は男の甲斐性だと誰かが言った。

しかし、浮気したことのない男というのは意外にも多いから
世の奥さん方は安心していい。

正確な統計があるわけではないが、たぶん風俗などを除け
ば過半数の男が浮気などしたことがないだろう。

乙は崇拝していたある四柱推命の巨匠が断言していたひと
言を思い出した。

愛人のいない人で成功した人はいない。

浮気をしたことのない男は誠実なのでも妻一筋なわけでもない。

単にモテないだけだ、と。

相手の女性にしても妻子ある上に魅力のない男に関わっている
時間などない。

人間ではなく他の動物であれば、ひょっとしたらその男は子孫が
残せなかったかもしれない。

当たり前だが、モテない男は浮気の心配もない。

モテない男の勘違いの一つに

「俺は浮気したことがない」

という自慢がある。

浮気しないこと自体はプラスでもマイナスでもない。

女性にとって世の中には死ぬほどキスしたい男と死んでも
キスしたくない男しかいないのだ。

乙も他の男からは誰もが一度は抱いてみたいと夢見られてい
た女性だった。

「乙が二人いたらいいのに」

乙を知る男たちはそう叶わぬ夢を見ながら街中で似た髪形の
似た服装の女性を見かけると目で追うのだった。

日付が変わり施錠しなければならない、パークスの警備員が
遠慮がちに甲と乙に懐中電灯を向けた。

警備員は振り返った乙の美貌に一瞬怯んだ。

同時に

「何でこんな美人が・・・隣の男はいったい何者だ?」

と顔に書いてあった。


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投稿者 senda : 00:30 | コメント (0)

2009年09月30日

よかった、落ちてくれていて…

勝負は、一瞬だった。

掲示板に甲の番号はなかった。

「や、やったぁ~」

後から後から押し寄せる群れの中、ただ一人だけ、
バンザイをするスラリとした長身の女性がいた。

甲の腕にしがみついていた乙だった。

「よかったぁ~、あなたが京大に落ちて。
初詣でお願いしたことが叶った。神様って本当にいるのね」

乙は涙ぐみながら言った。

乙の顔があまりにも幸せそうだったので、
アメフトの部員たちに二人で揃って胴上げされてしまった。

立て続けにフラッシュが光った。

レポーターは甲にではなく、垢抜けた乙にマイクを向けた。

「おめでとうございます!合格の要因は何ですか?」

乙はハキハキと答えた。

「はい。愛の力です」

甲は異様な盛り上がりを見せたこの写真が、
来週号の「サンデー毎日」の表紙に掲載されないかヒヤリとした。

・・・・・・・・・・

二人ともようやく掲示板の人だかりから脱出した。

「オマエ、どういうつもりだよ」

甲は乙の腕を引っ張って顔を睨んだ。

「だって、これで一緒に慶応に通えるもん」

乙は慶応大学理工学部に進学が決まっていた。

乙は屈託のない笑顔で甲の腕に力一杯しがみついて囁いた。

その瞳の中にかすかな寂しさが垣間見えた気がする。

甲はこのときの乙の笑顔を生涯忘れることはないだろう。

甲は落ちたら潔く、
乙と一緒に合格していた慶応に通うと約束していた。

甲はこのとき初めて今まで交際してきた乙に対して、

「コイツ、すごいな」

と脅威を感じた。

1ヵ月後、
甲は乙に内緒で後期日程に出願していた、野暮ったい
某国立大学のキャンパスにただ1人ポツリとラコステの
ポロシャツを着て立っていた。

はるばる新幹線で到着した駅のホームにはさとう宗幸の
感動的名曲「青葉城恋唄」が流れていた。

寒さと共に、身に沁みた。


乙は現在、物理学者として活躍している。

ホームページで学者プロファイルを見る限り、
まだ旧姓のままだ。


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投稿者 senda : 00:37 | コメント (0)

2009年09月23日

君は本屋の店員だった。

甲は学生時代毎日本屋に通った。

部活で遅くなっても明日試験で帰って勉強しなければ
ならない日も。

それは店員の乙をひと目見るためだった。

本が好きだったのではない。

乙に会いに行くために本屋に通っていたのだ。

乙はPUFFYの大貫亜美似だった。

わざわざレジに並ぶ時も乙の列に並んだ。

いつも読みもしないカッコいい本を選んだ。

「次にお待ちのお客様こちらにどうぞ」

と言われても聞こえないふりをした。

乙は冬になると、
いつも軽い霜焼けでバンドエイドを薬指にしていた。

甲はこの書店に自分の本が並べられる日が来たとき、
乙に

「甲という有名作家の○○という本を探しているのですが」

と声をかけようと誓った。

19歳だった。


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